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渡り廊下を会議室へ向けて歩きながら、近衛隊長は資料に目を落としている。
眉根を寄せ、厳しい表情で。
忙しなく紙束をめくっていたが、不意にその手を止めて。
やがて足も止める。
顔を上げ、眩しそうに廊下の向こうを見やった。
ゆっくりとやってくる一団を認め、静かにその身を端に寄せる。

先頭を歩く近衛兵が上官の存在に気付き、やや緊張した面持ちで敬礼する。
近衛隊長は部下の様子に薄く微笑んで答礼をし、彼の後ろに続く侍女の会釈には、
労いを含んだそれを返した。
そして。
「――姫様」
敬愛する王女に、誠実さ溢れる拝礼を。
「近衛隊長」
返されるのは、慈愛のこもった淑やかな微笑み。


紙束が、カサ、と音を立てた。


瞬間。

深い色の瞳がいたずらっぽく輝いて。
深緑の瞳がわずかに細められた。

すれ違う刹那、交わされるまなざし。


  “また後で”
  “待ってる”


言葉にならない。
誰にも気付かれない。
それは二人だけの――。


背後に遠ざかる、愛しい気配。

振り向くことなく近衛隊長は廊下を歩く。
資料の紙束を手に提げて。
口元には淡い頬笑み。
その足取りも、軽く。

 


仲良し幼馴染みで、主従で、恋人同士。
時には兄と妹であり、姉と弟でもあって。

お互いが相手に対して5役をこなします。

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