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日記と見せかけた雑記。拍手コメント&メールのお返事もこちら。ここだけの限定小話もあり。
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「同じ日にお休みが取れたらお出かけしましょうね」と君が言ったから今日はデート記念日。

……何だそりゃ。

心の中で己にツッコミを入れてから、浮かれている証拠だなぁとエイトは苦笑する。

――ま、それも仕方がないって。

二人きりで出かけるなど初めてのことなのだから。
……否、これまでにも二人で外出することはあったのだ。何度も。
だが、それも城を出るまでのことで。
近い将来義理の父親になるところの国王や、意外に寂しがりなネズミの祖父が、いつの間にか
ちゃっかりついてきていたりして、最後まで二人きりで外出を楽しめた日はなかったのだった。

――だけど、今日こそは。

トロデ王は執務室から離れられないし、祖父は長老会議で里に帰省中。
そのような日に彼女と休みが重なろうとは。
まさに僥倖。
神さま――なんていないから、空と海と大地に感謝しよう。

というわけで、二人して城を出たわけだが。
黙って出て行けばトロデは国家権力を、また祖父は老いたりとは言え野生の勘を、それぞれ
駆使して探し回り、結果として大騒ぎになることが確実に予想されるので、エイトは一応の
対策をしておくことにした。
すなわち――置き手紙を。

  “探さないで下さい”

置き手紙といったら文言はこうだろうと、勢いよく書き終えた瞬間、光の速さで恋人から
ダメ出しが入った。
まるで駆け落ちでもするみたいだと彼女は言った。わたしは別に構わないけれど。
「あなたが困るのではなくて?」
「……確かに」
その場の乗りと勢いで書いてしまったこの文言は、主君の怒りを最大限にまで高めること
だろうし、まかり間違ってアホの副官にでも知られようものなら「エイトが駆け落ちした
らしいぞ。いつ半泣きで捕まるか賭けようぜ」とか言い出して、調子に乗った若手兵士達が
異様に盛り上がるのに決まっている。
「――悲劇的だ」
最悪の未来を回避すべく、エイトは再びペンを握った。
書き直した文面は。

  “夕食までには戻ります”

これにはミーティアも納得して、エイトに倣い、自分も丁寧な字で署名した。
二つの名前が寄り添う様は、どうしてだかちょっと気恥ずかしくて。
思わず顔を見合わせると、くすぐったい気持ちで二人一緒に笑ったのだった。


最愛の恋人が望んだ町にルーラで降り立ち、仲良く手を繋いで歩きながら、エイトは思う。

――今日は良い一日になりそうだ。





なるのか?


続きは考えてないです。
ただ、浮かれてる主人公君が書きたかっただけ。
リハビリのつもりで。

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花のように甘い香り。柔らかな感触。
そして、いつも傍らに感じていた慣れ親しんだ気配――

エイトはゆっくり目を開けた。
途端。
一気に眠りから覚醒し、そのまま絶句する。

目の前にミーティアがいる。
それはいい。彼女が自分の傍にいるのは当たり前だからだ。
問題は――その、場所だった。
自分の上に覆い被さるようにして、彼女は眠っている。
思わず呟いていた。
「……君、何でここにいるんだよ」
もちろん恋人からの返答はない。

――…オーケイ。ひとまず落ち着こう、俺。

まずは状況確認から。
今居るここは――自分の執務室。
自分が横たわっているのは、仮眠用の長椅子。
その自分の上で、最愛の恋人が日向ぼっこを楽しむ猫のようにまどろんでいるわけだ。

――何故?

と思う間もなく、想像できた。
いつものように彼女は空き時間を利用して、自分に会いに来たのだろう。
そうして、いつものように仮眠(サボタージュにあらず)する自分を発見。
つられて眠ってしまった。
というわけで、現在に至る。
「…………」
つられて眠り込む前までに、彼女がとったであろう行動や、何を理由にして自分に
寄り添う結果になったのかなど、そのような細かいことははっきりくっきり考えない。
なぜなら、自分の精神面にとって非常に良くない影響を与えそうだからだ。

――さて。

ひとの気持ちも知らず、いまだすやすやと眠り続けるミーティアを上にして。
エイトは考える。
「どうしたものかな」

1 気付かなかった振りをして、もう一度眠る。
2 彼女が自然に目を覚ますまで、そのままにしておく。
3 悪戯してみる。

「って、それ犯罪だろ」
困った。
まともに思考が働かない。
落ち着いているつもりでいたが、しなだれかかる愛しい重みのせいで、完全に空回って
いる。
――ああ、もう。
観念して。
「……ミーティア」
静かに名前を呼ぶ。
いつもならぱっと顔を輝かせて嬉しそうに微笑むのに、それでも彼女は目を開けない。
――うっ。本気で寝ちゃってるよ、この人。
よほど疲れていたのか。
それとも――。
安心しきっているのか。

自分の傍らが一番安らげる場所なのだと、彼女が思っていてくれるのなら。
それは嬉しいと素直に思う。
何よりも、常にそうありたいと望んできたから。
今の自分なら、凶悪な魔物だろうと、某国のダメダメ王子だろうと、どんな災厄からも
彼女を守ることができる。
その自信はある。
――だけどさ……。
己の身に押しつけられる柔らかな身体と、その体温を心地良く感じながら、苦笑する。
「俺から君を守る自信は、あんまりないんだよね」
長い髪を優しく撫でて。
少し身を起こすと、わずかに彼女の顎を上向かせる。

それは4番目の選択肢。

自分も顔を傾けて。
彼女の耳元でそっと囁く。


「キアリク」

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