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本当は拍手の10回目にこっそり仕込んでおこうかと思ったのですが、それだと10割の
確率で誰にも見てもらえないこと必至で、それはそれでちょっと寂しくて、だったら、見て
もらえる確率3割のブログに上げてしまおうと持ってきた小話です。
隠すほどのものではありませんが、何か恥ずかしいし、一応折りたたんでおきます。言い訳終わり。

以下、興味のある方だけ続きをどうぞ。


+ + + + + + + + + +

『幸せのまどろみ』


日の出前に目覚めるのは小間使い時代からの習慣で、あれから何年経っても――旅する間も
また、あの頃よりはるかに高い地位についても――それは変わらずに。

その朝もいつも通りの頃合いにエイトは目を覚ました。
そして、またか、と思う。
いったい何度目だろう――。
鎖骨の辺りに愛しい恋人の寝息を感じつつ、彼女の腕の中で目覚める朝は。

昨夜――自分は彼女をこの腕に抱きしめて眠りについた。
同じ寝台で眠る夜はいつもそうする。
確かに昨夜もしっかりと腕に閉じこめていたはずだ。
けれど、目覚めれば彼女の抱き枕状態。
――…いつの間に?

だいたい、抱きしめられて眠ることを望んだのは彼女なのに。
どうしていつもいつも立場を反転させてしまうのか。
それから――いい加減にしろ自分。
腕の中からすり抜ける彼女に、何故いつも気付かない。
……思えば昔からそうだった。
いつまで経っても、彼女の気配だけは感じ取れずにいる。
否、正確には少し違うか。離れれば、その瞬間に分かるのだから。
近くにあるほど感じ取れない。
それはきっと、傍にあるのが当たり前すぎるからなのだろう。

と、自己分析はそこそこにして。
恋人の意図に思考を巡らせようとする。
が、自分に抱き付くしなやかな肢体から意識が離れようとしないので、あっさり放棄した。

この首に巻き付く両腕はこんなに華奢で。
絡められた両足もほっそりしていて。
そうであるのに、その身体はとてもとても柔らかい。
これは――自分だけしか知らないミーティアだ。

艶やかな髪を優しく撫でて、そっと口付けても、眠り姫は安らかな寝息をたてている。
安心したように眠り続けてくれる彼女が嬉しくて。
どうしようもなく愛しい。

かぐわしい髪を放し、そのまま左腕を伸ばして小さな頭の下に差し入れてやろうとすれば、
「ん……」
彼女は小さく身じろぎして、ますますぴったり身を寄せてきた。
「大丈夫、離れないから。腕枕するだけだよ」
耳元で囁き、空いた方の手で背中を抱き返す。
するとようやく安堵したのか、彼女の口元がちょっとほころんだ。
その寝顔に微笑みを返すと、起こさないように気を付けて腕の位置を調整し、収まりの
良い体勢に落ち着かせた。
その際、ずれた毛布を元通りに肩まで掛けてやろうとして――
「――あれ?」
思わず呟いた。
彼女が身にまとっているのは寝間着ではなく、
「何で俺のシャツなわけ?」
疑問を抱きながらわずかに首を振り向かせると、椅子の背に彼女の寝間着がかろうじて
引っかかっているのが見えた。
「あー……」
どうやら昨夜は相当寝ぼけていたらしい。
少なくとも、間違えて自分のシャツを彼女に着せてしまうぐらいには。
「…………」
更に毛布をずらし、はだけた胸元から魅惑のふくらはぎまで、滅多に見られない彼女の
しどけない姿をじっくり鑑賞した後、
――うん、いい。
感情の赴くまま、柔らかな身体をぎゅっと抱きしめる。
今後、一緒に夜を過ごす時はこれを着てもらうことにしよう。
可愛いし、姫君の寝間着より脱がせやすいし、また着せやすいのもポイント高し。
彼女が目覚めたら、早速交渉しようと心に決める。

――さて、それまでは。

甘く香る髪に頬を埋めて、エイトは瞳を閉じた。

今朝はさしせまった職務もないことだし、寝坊して早朝訓練に遅刻することになったと
しても部下が喜ぶだけだ。冷やかされもするだろうが。
そんなことは些末な問題で。

今の自分にとってもっとも重要なことは、恋人の優しい腕に包まれて、その体温を感じ
ながらゆっくりとまどろむことなのだから――。

 




『一緒の構図って眠れないしね?』
の発展型

現在書いている小話がどうにもシリアスで、主姫の二人も出てこないこともあって、乗りが
悪い悪い。
書いていてだんだんしんどくなってきたこともあって、ちょっと目先を変えてみました。
ちょっと甘めなお話を、と。

隣に体温を感じながら眠るのは安心するよね、とか、
女の子がパジャマ代わりに男物のシャツを着るのは可愛くてえろいよね、とか、
エンディング後の二人はナチュラルバカップルでいてほしいよね――
――なんて、
言いたいことは色々あるのに、何ひとつとしてまともに表現できていないのが自分らしくて
凹みます、というか、笑えます。

あと、主人公君がやけに冷静なのは、かなり寝ぼけているからだと思われます。
以上。

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